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「相手の言動は真似ましたか?」 「え?」 「ミラーリングですよ、ミラーリング」 「あっ、すみません。すっかり忘れてました」 「なんと! では『好意の返報性の原理』は? 『認知性不協和理論』は? 『ベンジャミン・フランクリン効果』は!?」 「……す、すみません」 「はぁ。やはりデートは失敗のようですね」  藍沢さんが深い息を吐き、僕はシュンと肩を縮こまらせた。彼女いない歴32年の僕は勝手に成功した気でいたけど、アドバイザー歴40年のプロから見れば全くのダメダメだったらしい。 「あ、でもっ! 最後少し世間話で盛り上がりかけたので、ちゃんと中途半端なところで切り上げました! なんでしたっけ、ツァ、ツァイ……」 「ツァイガルニク効果?」 「それです!」  ふと思い出した僕は名誉挽回のために慌てて主張する。他はほとんど忘れてしまっていたけれど、これだけは覚えていてちゃんと実践できたのだ。 「私から見ればデートの終わり方も論外ですよ、ハッキリ言って」  しかし予想外の強い返事がきてびくりと身構える。
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