四章

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「……お金も返して貰えない、勝手に泣いてるだけならもう帰るよ」  お金が返ってくる可能性はほぼ無い、なら私は妹に用はない。  一緒に居るだけで昔のみじめだった自分を思い出して、悲しくて嫌な気持ちになる。  妹が頼んでいた分の伝票を掴む。  私は何も注文しなかったので、そのぶんレジの横で売っている焼き菓子いくつか買って帰ろう。  騒いでしまったことも、謝罪しないと。 「待って、ちがうの、聞いて!」  立ち上がった私を、妹が引き止める。 「他にする話なんてあるの?」 「お姉ちゃんひどいよ、私が困ってるのに……」  今度は顔を覆って泣き出した妹に、寒気がした。  話がまったく通じない。自分が悪いなんてちっとも思っていない。  このまま一緒にいたら、この異様な妹の雰囲気に飲み込まれて私がおかしくなる。  昔の、私を叱る母親の顔を思い出して、私は伝票をテーブルに戻してすぐに店を出た。  
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