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鳩が豆鉄砲食らった……なんて言葉があるけれど、私には頭の上から隕石でも直撃したような衝撃だった。
そこから更に、新たな宇宙が発生しそう。
三百万で、私を一年間を買うなんて。
それに、契約結婚しようとも聞こえた。
「丁度明日は休みなので、三百万揃えて前払いでお支払いできます」
はっきりとした声で、ぽかんとしている私に語りかける。
どうやら、さっきのは聞き間違えでは無いらしい。
でもそれって、もしかして。
「あの、それって……愛人契約とかの話ですか?あ、でも結婚?とかって……?」
口に出してみると、更に自分が混乱しているのがわかった。それに、平凡な私に神楽坂さんが愛人契約を申し出るなんて、思い上がりだと顔が熱くなる。
「いえ、愛人ではなく妻です」
「つま」
語彙力も『妻』というワードで砕けてしまった。
「愛人契約ではなく、本当に婚姻関係を結びたいのです。婚姻届を提出して」
神楽坂さんがあまりにも堂々と話をするので、落ち込む気持ちが一旦遠くに飛んでいってしまった。
「あの……もし大丈夫なら、神楽坂さんが結婚したい理由を教えて貰えませんか? ていうか、独身だったんですね。それから私のことを……す、好きって訳ではないんですよね?」
かなりすごいことを聞いてる自覚がある。
緊張でひりつく喉を潤すのに、端に置きっぱなしになっていたグラスの水を一気に煽った。
指先がびしゃびしゃになるほど、透き通ったブラウン色のグラスは汗をかいていた。
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