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第一話 美星の決意(二)
宮廷人は多忙だという。平和な日常が訪れたが、それを支える宮廷は誰もが東奔西走しているらしい。
莉雹と彩寧もそうそう顔を見せるわけではない。響玄は不在のこともあるというのに、先触れも無く訪れるというのは珍しかった。
「莉雹様。彩寧様。お待たせ致しました」
「いいえ。すみません、急に」
「構いませんよ。しかし彩寧様がいらっしゃるとは珍しい。侍女は特に忙しいでしょう」
「はい。そこで響玄殿の力を借りたいと思い参りました」
「私にですか? 女性の繊細な仕事を私のような武骨者がお手伝いできるかどうか」
「まさか現場ではありませんよ。相談したいのは採用です。先代皇派が去り職員は半分以下になりました。人員があまりにも足りないのです」
国民から圧倒的支持を得る天藍だが全く支持を得ない層があった。宋睿を支持していた宮廷人だ。
宋睿に惚れ込み勤めていた宮廷職員と有翼人を嫌う者は宋睿こそが正義としていた。
彼らの多くは天藍が立ったことで蛍宮を去ったが数名は残っていた。それが獣人職員である。
(追い出せばいいのに。どうして置いてやるのかしら)
もし美星なら宋睿の部下が雇ってくれとやって来たらすぐさま追い返すだろう。
けれど天藍は彼等を受け入れ政治に取り組んでいる。美星にその考えは理解できず、それだけで天藍は受け入れがたい存在だった。
「それで採用を強化するんですが、この人集めを手伝って頂きたいのです」
「なるほど。具体的にはどんな人員を?」
「天藍様を支持する者なら老若男女種族経歴問わず誰でも。教育から始めるので学の有無は問いません」
「それならいくらでもおりましょう。解放戦争で職を失った者は多い」
響玄が従業員を増やしたのはそれが理由でもあった。
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