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有翼人は粛々と、ただ大人しく暮らしていた。そんな有翼人の住処に武装した獣人部隊が突入したのだ。老若男女問わず対象となり、親は子を連れ逃げ惑った。
「美星! こっちだ!」
「は、はい!」
有翼人として生まれた美星が二十三歳の誕生祝をしたばかりだった。
しかし祝う場を捨て人間である父・響玄は家も財も全て捨て国を出ようと走った。しかし国外へ出られる門全てに兵が立ち、有翼人を切り捨てる場所と化していた。
そして、その中には美星の友人の姿もあった。
「小鈴!」
「駄目だ! 出るな!」
「でもお父様! 小鈴が!」
ふいに小鈴と目が合った。けれど小鈴から助けを請う声は出なかった。その前に剣が突き立てられ、ぱたりと動かなくなってしまったのだ。
「小」
「声を出すな。来なさい」
美星は響玄に口を押さえられ、涙をこぼしながら獣道を走った。
逃げて飛び込んだ先は響玄が賃貸をしている別荘の一つだ。街から遠く森深いため買い手が付かない家だった。
「ここならすぐには見つからない」
「でもどうしたら……」
響玄は美星の肩をぽんぽんと叩くと戸棚の前に立った。そこから取り出したのは短刀だ。それの切っ先を迷うことなく美星に向けた。
「……お父様?」
「許せ、美星」
「お、お父様? お父様!?」
響玄は流れるような手つきで刃を振り下ろした。
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