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「氷一升を銅十は高すぎますな。銅五」
「仕方ないですね。では銅八」
「五」
「八」
「五」
「八」
「五」
「……では七」
「では六。それ以上は他を当たります」
「……六で」
響玄が購入しているのは氷だ。海が遠く温暖な蛍宮において氷は貴重品で、どの種族にも求められる高級品でもある。
卸す側にとってはこれ以上ない商品で値下げに応じる必要などない。その商談を主導し値切り購入できるのは響玄の商人としての力を示していた。
響玄はにこりと満足げに微笑んだ。客は諦めたような苦笑いを浮かべ、しぶしぶ契約書に署名をして帰っていった。
商人の丸まった背中を見送り扉を閉じると、響玄と美星は目を見合わせて噴き出す様に笑った。
「お父様ったらまた卸業者をいじめて」
「なんの。これくらいできなくては商売はやっていけん」
「そうね。だからみんなお父様を頼りにするんだわ。莉雹様と彩寧様が来てるわよ」
「お二人で? 珍しいな。すぐ行こう」
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