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「なんだなんだぁ? 朝から生きがいいなぁ、ここのメダカ達はよぉ」  そこへ、出席簿の角で肩叩きしつつ、定由(さだよし)倉吉(くらよし)教諭がぶらぶらやってきた。  誰かがうまく事情を説明したのか、それとも定由教諭の状況把握能力が高いのか。捨太郎が俯き、べとべとと涙を拭っているほんの短い間に、「了解、了解」と大人の手のひらが打ち鳴らされる。 「元気なメダカども、そんなにぴちぴちしてねぇで席に着け。嬉しくない楽しくないお勉強の時間だからよぉ」 「はぁい……」 「で、今日は金曜か。そんじゃあ(すて)。お前はうちに帰れ」 「……え!?」  びっくりして顔を上げる。みるみる青ざめていく捨太郎に対し、呆れたように「違ぇよ」と言い、汚れた尻をぺんと叩いてやって、 「罰でもなんでもなくてだな。その制服、今からじゃぶじゃぶ洗ってこいってんだよ。そういうのは早くやんねぇと、落ちるもんも落ちねぇんだから。で、今日から干してりゃ、なんぼなんでも月曜までにゃ全部乾くだろ」 「あ……。で、でも、実際こんなに早く帰ったら、どう説明しようとも両親に心配をかけてしまいます……勘弁してください、先生……」 「はぁ、なんだよしょうがねぇなぁ……。じゃあ魁、お前も帰れ」 「あ?」 「に連れてって、女中の誰かに制服洗ってもらえ。で、お前らは午後まで魁の部屋で自習。それでいいよな?」 「は? ……いやちょっと待て、ニジマスのおっさん。俺の部屋、今――」 「おらおら早く行けっての。はぁ、川釣りに行きてぇよ。……」  入れ墨のちらりとする腕に首根っこを掴まれて、ぽいぽいと廊下に放流されてしまう。振り向く隙もなく戸を閉められてしまい、捨太郎と魁は顔を見合わせた。
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