11.千代子、上京の理由

10/15
286人が本棚に入れています
本棚に追加
/289ページ
「―最近パーラーの方に女給を新たに一人、雇ったと聞いたがまさかその女をどこかに囲ってるわけじゃないだろうな」 「いい加減な事を言わないで下さい!!囲ってるだなんて、いくらなんでも、彼女に失礼です!!」 あまりの物言いに、鶴原は膳を倒さんばかりの勢いで立ち上がった。目の前に座っている父親の怜悧な瞳とかち合い、すぐに冷静さを取り戻すも、怒りは収まらなかった。 「―お前がどう思おうが、私の立場もある。とにかく、見合いは受けてもらうからな」 まだ怒りを処理しきれないのだろう、肩で息をしている息子に畳み掛けるように告げると、浩平は静かに食事を続けた。
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!