13.本家に挨拶

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「そうだったんですか…」 厳格な表情から目じりが下がって優しそうな雰囲気になる。が、それも一瞬の事だった。 「…うちは薬屋から商いを初めて徐々に手を広げていったが、商売というのは何が起きるか不透明だ。晴れの日ばかりではないし、時には身を切るような選択を迫られる時だってある。経営者の妻というのは、どんな時にでも伴侶を支えていけるだけの度量と胆力がなければ務まらないんだ。―椿さん、君にそれだけの覚悟があるかね?」 畳み掛けるような口調でそう尋ねられ、思わず言葉に詰まる。 「わ、私は…」
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