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14. 新たな日々と招かれざる客
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「―それじゃあ、鶴原のお義父様は賛成して下さったのね!」
事の顛末を興奮気味に聞いた後、千代子は黄色い声を上げた。
直後、離れたところで会話を聞いていたおばあ様の厳しい視線に気づいたのか、慌てて声を潜めて「これでめでたく結婚への障害は何もなくなって、良かったじゃない!」と付け加えた。
「…まだまだよ。仕事をしながら英会話とお茶のお稽古は大変だし、廉二さんのお父様は厳しそうな人だから手は抜けないから当面気は休めそうにないし。女中のみどりさんはいい人だけどね」
出された紅茶を飲んで、大きく息をついた。
鶴原のお父様―廉二さんのお義父さんのことだけど、通うように言われた英会話とお茶のお稽古は慣れるまで大変だった。こちらの気を知ってか知らずか、千代子はにんまりと笑う。
「何よ?」
「―しばらく会わないうちに大きく前進したなあと思って。前は彼の事を『鶴原さん』って呼んでたから」
そう言って切り分けたバウムクーヘンを美味しそうに頬張った千代子に、返す言葉をなくした。
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