14. 新たな日々と招かれざる客

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「新しい弁護士?誰です?」 「独逸の大学で法学を修めたメイヤーという西洋人と日本人との混血だ。高齢で退職する事になった湯谷さんの後任で来てもらおうと思ってる。上層部の承認は降りたから、お前にも伝えておこうと思ってな」 浩平はそう言うと、金庫から封筒を取り出して廉二に差し出した。 中には英文で書かれた経歴書と、独逸のハンブルク大学における法学士学位取得証明書が同封されていた。 英文の方には胸から上の写真と、筆記体で本人のものと思しきサインが認められている。 「ーなんでも法学の夜間部に通って法学士の学位を取得したらしい。若いのに大したもんだ」 「“リチャード・メイヤー”?いや、独逸語だからリヒャルト、か…。この男、実績はあるんでしょうか。学位だけ取得しても経験がないのなら意味がないようにおもいますが」 廉二はそう言って書類一式を冷たく突き返した。浩平は目を眇める。 「―英吉利の保険会社で2年、それと日本に来てからはカーター商会の弁護士を勤めていたそうだ。少なくとも赤坂に事務所を構えているから怪しい輩ではない事は確かだ」 そう言って差し出された名刺を見てみると、そこには事務所の電話番号がしっかりと明記されていた。
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