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3日前
彼は電車を待ちながら、物憂げに見ていたの。曇りのあの空を。
いつもとは違ったの。あの数日は。だって、私が一番彼を見てきたから。
彼と出会ったのは小学生の頃。私は本が大好きで休みの時間にはいつも、図書室に行ってた。たまに友達もついてきてくれるけど、みんな飽きていっつも中庭に遊びに行ってた。
私は自分の好きな本の話がしたかった。家族は聞いてくれたけど、私がおすすめする本なんて読んでくれなかった。きっとそれは私が小さかったから。
私の心は、ずっと、本の中だけだった。
でもある授業で、クラスのみんなで本を借りに行くことになった。みんなは、自分の思い思いの本を選んでた。
だけど、アキト君は違った。私に話しかけてきたの。
「おすすめの本とかある?ミカ、本好きなんでしょ。」
彼はたまにユウタ君と図書室に来ていた。一人で来ることもあった。私は毎日図書室に居たから、覚えていてくれたらしい。いつもいるなって思ってたのかな。
きっと彼にとっては何気ない一言なんだろうけど、私にとってはすっごく嬉しかった。
それから彼は図書室を訪れるとき、私に話しかけてくれるようになった。本の話をして仲良くなって、普段も話せるようになったの。
高校生になって、帰りの電車でも隣りに座って、色んな本の話をした。学校の話もした。家族の話もした。彼は私の話をしっかり聞いてくれてた。相づちを打って、一緒に笑って。
早く想いを伝えれば良かった。
そう、彼は私の憧れの人だった。でもどうして…
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