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彼は電車を待ちながら、物憂げに見ていたの。曇りのあの空を。 いつもとは違ったの。あの数日は。だって、私が一番彼を見てきたから。 彼と出会ったのは小学生の頃。私は本が大好きで休みの時間にはいつも、図書室に行ってた。たまに友達もついてきてくれるけど、みんな飽きていっつも中庭に遊びに行ってた。 私は自分の好きな本の話がしたかった。家族は聞いてくれたけど、私がおすすめする本なんて読んでくれなかった。きっとそれは私が小さかったから。 私の心は、ずっと、本の中だけだった。 でもある授業で、クラスのみんなで本を借りに行くことになった。みんなは、自分の思い思いの本を選んでた。 だけど、アキト君は違った。私に話しかけてきたの。 「おすすめの本とかある?ミカ、本好きなんでしょ。」 彼はたまにユウタ君と図書室に来ていた。一人で来ることもあった。私は毎日図書室に居たから、覚えていてくれたらしい。いつもいるなって思ってたのかな。 きっと彼にとっては何気ない一言なんだろうけど、私にとってはすっごく嬉しかった。 それから彼は図書室を訪れるとき、私に話しかけてくれるようになった。本の話をして仲良くなって、普段も話せるようになったの。 高校生になって、帰りの電車でも隣りに座って、色んな本の話をした。学校の話もした。家族の話もした。彼は私の話をしっかり聞いてくれてた。相づちを打って、一緒に笑って。 早く想いを伝えれば良かった。 そう、彼は私の憧れの人だった。でもどうして…
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