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僕は明日死ぬのだろうか。 そんなことをなんとなく考えていた。 僕の予知は、外れたことはなかった。自分の予知を初めて自覚したのは、園児の頃、駄菓子屋でのことだった。家族で出かけ、駄菓子屋で好きなお菓子を3つまで買っていいと母に言われた。 僕はその日、222という数字の夢を見た。その時数字は少しだけわかっていたから、その夢を覚えていた。 すると、偶然にも会計の金額が222円で、ゾロ目だった。僕は少しだけ嬉しかった。母はまだ小さい妹を抱えていたので、父が代金を払い、ゾロ目だぞと、僕に見せていたことを覚えている。 僕はいつもの休日のように、寝転びながら、また本のページをめくる。文字の羅列だけがはっきりとする。明日の自分なんて見てはいない。どうにでもなってしまえと思っていたような気がする。 1日前にやれることなんてなかった。ただ、明日死ぬとしたら、今日は思いっきり好きな本を読みたい。そんなことを言い訳に、僕は宿題もせず、本を読んだ。そんなことは初めてだった。 梅雨の季節、夕方の2階にある自室のあまりの蒸し暑さに、僕は窓とドアをを開けていた。 母が階段を登ってくる大きな足音が聞こえた。母はドアの開いている部屋の入口で「ご飯できたよ。」という。 返事をすると隣の妹の部屋に向かう。その"いつも通り"が、明日にはなくなるんだ。そう思った。
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