結婚式

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結婚式

「――おめでとうございます、紗霧(さぎり)お嬢様。柑慈(こうじ)兄さん。……どうか、お幸せに」 「ありがとう、藍良(あいら)さん」 「ありがとな、藍良」  祝福の言葉を告げると、二人とも穏やかな微笑を浮かべ応えてくれる。そう、本日は婚礼の儀――二人にとって……そして、二人のことが大好きな僕にとっても記念すべき日だ。  ちなみに、儀式は良家のイメージとは違い屋敷内でひっそりと行われた。いくら傑出した才能を備えているとは言え、いわゆる一般庶民たる柑慈兄さんを婿に迎え入れるなど言語道断――なんて、周囲の良家仲間達からたいそう非難を受けたらしい。すると、お父様はお父様で、それなら無理に式に来てもらう必要もないと、こうして身内だけで執り行う運びとなったらしい。まあ、僕個人としてはこういう方が好きだし――それに、何より大切なのは式の形体なんかじゃなく、二人が幸せな気持ちで結婚(この)日を迎えられることなんだと、二人の様子から改めて感慨深く思う。
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