可憐な少女は無邪気に笑う

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「……ところで、随分と今更ではありますが――本当に僕が家庭教師で良いのでしょうか? 僕より優秀な先生なんて、それこそ星の数ほどいるでしょうし――それ以上に、そもそも柑慈(こうじ)兄さんがいるのに……」 「本当に随分と今更ね、藍良(あいら)さん。あれからもう何年も経っているというのに。」  些かの逡巡を覚えつつ問い掛けると、可笑しそうにクスッと笑うお嬢様。まあ、至極(もっと)もな反応だろう。彼女の言うように、あれから――彼女の家庭教師を務めてから、もう何年経ってるんだという話だ。  だけど、ずっと頭の片隅に引っ掛かりを覚えていたことだ。先ほど自分で言ったように、僕より優秀な先生なんて星の数ほどいるし――そもそも、数学の天才たる柑慈兄さんが傍にいるのに僕という教師の必要性がほとんど感じられないのだ。なのに、婚約者の弟という理由だけで仕事を頂いているだとしたら……やはり、多少なりとも申し訳なさを覚えずにはいられなくて。
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