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序
この世界には三つの種族がいる。人間と獣人、そしてそのどちらでもない有翼人だ。
私の母は人間だ。死んだ父は鳥獣人だったけど、私は有翼人として生まれた。
有翼人は人間でありながら背に羽を持つ。けれど羽は神経が通っていない。鳥のように飛ぶどころか動かすこともできないのでお荷物でしかない。
重い……暑い……
私の羽はとても大きい。身体を覆うほどの羽は歩くことも許してくれない。異常なまでに保温性が高いため少し動けば汗をかき、羽根が触れると痒くて掻きむしるのでまた皮膚炎になる。
動けないから働くこともできず、働きに出る母を見送るしかできない。
しかしその稼ぎは私の皮膚炎の薬代に消え、そんな私は食事を与えらえるのを待つだけだ。
……有翼人にさえ生まれなければ
苦労して育ててくれる母にそう叫びたい気持ちを抑えて生きる。それが私という生き物だった。
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