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立珂様は持って来ていた袋をごそごそと漁り、中から何かを取り出した。それを私の前にずらりと並べてくれる。
それは服だった。どれも色鮮やかで、初めて立珂様を見た時に目を奪われたお洒落な服とよく似ていた。
「何色が好き?」
「え? あ、えっと、朱色……」
「朱色ね! じゃあこれ着てみて!」
「は、はあ……」
立珂様はひと揃え私に与えて下さり、私はそれを持って隣の部屋へ着替えに向かった。
そしてそれを広げると、私は腰を抜かすほど驚いた。
「凄い! これ全部ばらばらになるんだわ!」
広げたのは確かに服だが、あちこちに釦が付いている。それを全て外すと数枚の生地に分割されていた。どこも縫い合わさっていないので被ったり羽織ったりする必要が無い。
「組み立てながら着るんだわ。羽を通すんじゃなくて服を置くんだ」
私は羽の下に後身頃を滑り込ませて飛び出ている両端を肩にかけた。それを前へ持ってくると鎖骨を隠した辺りに釦が付いている。そこの番である前身頃に釦を留めると、身体の前をすっかり隠してくれた。背中は首と羽付近の肌は露出している。
そこに登場したのが露出部分を隠すための付け布だ。布は露出部分を覆い隠せる形状になっていて、肩と身頃の釦に止めると全て肌が隠れるのだ。
これで着替えが完了したが、まだ何か部品が残っていた。それは中心が丸く繰り抜かれた布があり『羽の付け根を覆う布だよ! 自分に合った大きさに切ってつけてね! 立珂より』と書いていある。
布は服の生地よりもずっと柔らかくて、これなら個人差のある羽の付け根の凸凹にも対応できるだろう。ふにゃふにゃしているので傷みもなさそうだ。
「着る前に付けなきゃいけないんだ。じゃあとりあえずこれで完成……」
私は自分の身体をじっと見た。分割されていた布を組み立てただけなのにちゃんとした服になっている。着替えなどという大変な作業はしていない。釦を止めただけだ。汗などかく暇もなく着替えは完了した。
私は立ち尽くした。どうして自分がこんな簡単に着替えをできる日がくると想像できただろうか。
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