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小さくなんて嘘よ。抜いたってすぐ生えてくるんだから。
有翼人は多くが引きこもっているが故にその生態は分からないことが多い――と言われている。
実際自分でも分からないことばかりで、その代表がこの羽だ。これは神経が通っていない。鳥のようななりをして飛ぶどころか動かすこともできない。一体何のために付いているかも分からないうえ、一枚抜いても数日すればすぐ元通りになってしまう。全部抜いていやろうと思ったこともあったが、抜きすぎると途端に具合が悪くなる。やりすぎて意識不明に陥った者もいるらしく、結局どうにもできないのだ。
仮にどうにかする方法があったとしても、それを教えてもらえるかは全くの別問題だろう。
殿下の来賓なんて高貴な方が、こんな汚い家に来るわけがないわ。
来賓といえば国の重要人物だ。それがこんな国の隅で埃まみれになってる家に来るわけがない。そんな眉唾に踊らされ、仕事を放り投げた母が雇い主に叱咤されるのは愚か――申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
私はおおきなため息を吐いた。しかしそれは一転した。なんと母は二人の少年を連れて帰って来たのだ。
「朱莉! 立珂様が来て下さったよ!」
全く信じていなかった。妙な宗教団体の罠にはまっていたらどうしようと思ったが、その少年を見て私は震えた。
そこにいたのは純白の羽根を持つ少年だった。ぷくぷくの頬に愛らしい笑顔、そして釘付けになってしまうお洒落な服。
「立珂様……!?」
それはかつて見た幻だった。幻想だと言い聞かせた、あの奇跡を体現している子だった。
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