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この子が立珂様!?
どくんと心臓が跳ねた。私の本能が何かを察した。これで私の日常が変わると、そう確信できるほど立珂様の羽は美しかった。
私はあの時なんと声を掛けようとしたのだっただろうか。何を言いたかっただろうか。今なにを言えばいいだろうか。
どうしたら良いか分からずにいると、立珂様はくいくいっと一緒にやって来た黒髪の少年の袖を引いた。よく見ればあの時立珂様を抱いていた少年だった。
「薄珂」
「うん。羽見せてもらってもいい?」
「は、はい……」
名前からして兄弟だろうか。薄珂と呼ばれた少年は私の背の後ろに座ると羽に手を突っ込んだようだった。髪の毛のようなものなので気持ちが悪いとは思わないが、無遠慮に掻き回されるのは良い気はしない。
母もそう思ったのか、いぶかしげな顔で薄珂様を覗き込んでいる。
「あの、何を」
「大丈夫だよ! 僕いつも薄珂にやってもらってるから!」
「そ、そうなんですか?」
立珂様はぴょんぴょんと飛び跳ねた。羽に呑み込まれる私にはできないことだ。
ふいに薄珂様の指先が私の背に触れた。さすがに驚いたが、薄珂様はばさりと私の羽を持ち上げ顔ごと入り、何かを確認しているようだった。
「ああ、立珂と同じだ」
「治りますか!?」
「うん。今やっていい?」
「ここでできるんですか!?」
「どこでもできるよ。でも何やるか見てもらった方がいいかな。立珂」
「はあい!」
何が判明したのか、何が起きているか分からなかった。
立珂様は薄珂様へくるりと背を向けた。すると薄珂様は私にしたのと同じように立珂様の羽に手を差し込み何かを探っている。
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