第一話 純白の奇跡

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「あった。立珂、準備いいか?」 「どぞ!」 「二人とも見ててね」  立珂様はぎゅっと拳を握り、薄珂様は立珂様の羽の中で何かをぐっと掴んだようだった。 「せーの」 「んにゃー!」  薄珂様は声掛けと同時に、立珂様の羽の中から手を引き抜いた。その手には何かが握られていた。何か、ではない。羽だ。立珂様の羽を抜いたのだ。  しかし羽根というのは摘まめば抜ける。こんなに気合いを入れて抜くものではない。  それでも薄珂様は勢いよく引き抜き、同時に立珂様はぶるぶると身震いをしていた。そして私も身震いした。  何しろ立珂様の悲鳴と同時に、ばらばらと大量に羽根が抜け落ちたのだ。一斉に抜けたのか、立珂様の足元を羽根でいっぱいになった。 「こ、これ……」 「やはり立珂様もご病気で!?」 「ちがうよー。羽は間引くんだよ」 「ええと、病気ではなく?」 「違うよ。有翼人はみんな同じ。でも大元を引っ張ると一気に抜けるよ。触ってみて」  薄珂様は母の手を引っ張って私の羽の中を一緒に掻き回していた。するとつんっとまた薄珂様の指先が触れ、その指を追って母の指も辿り着いて来た。 「膨らんでますね」 「そう。ここの羽を一気に引っ張る」 「でも身体の中がにゅるーってするの。くすぐったいけど我慢ね」 「じゃあやってみて。二重になってるとこ抜けば見た目あんまり変わらないよ」 「分かりました。朱莉。抜きますよ」 「うん……」  母は少し怯えながらも、薄珂様が示してくれた場所の羽をぐっと握りしめた。  そしてすうっと息を吸い込むと、母はえいっと掛け声を上げて羽を引いた。
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