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「あった。立珂、準備いいか?」
「どぞ!」
「二人とも見ててね」
立珂様はぎゅっと拳を握り、薄珂様は立珂様の羽の中で何かをぐっと掴んだようだった。
「せーの」
「んにゃー!」
薄珂様は声掛けと同時に、立珂様の羽の中から手を引き抜いた。その手には何かが握られていた。何か、ではない。羽だ。立珂様の羽を抜いたのだ。
しかし羽根というのは摘まめば抜ける。こんなに気合いを入れて抜くものではない。
それでも薄珂様は勢いよく引き抜き、同時に立珂様はぶるぶると身震いをしていた。そして私も身震いした。
何しろ立珂様の悲鳴と同時に、ばらばらと大量に羽根が抜け落ちたのだ。一斉に抜けたのか、立珂様の足元を羽根でいっぱいになった。
「こ、これ……」
「やはり立珂様もご病気で!?」
「ちがうよー。羽は間引くんだよ」
「ええと、病気ではなく?」
「違うよ。有翼人はみんな同じ。でも大元を引っ張ると一気に抜けるよ。触ってみて」
薄珂様は母の手を引っ張って私の羽の中を一緒に掻き回していた。するとつんっとまた薄珂様の指先が触れ、その指を追って母の指も辿り着いて来た。
「膨らんでますね」
「そう。ここの羽を一気に引っ張る」
「でも身体の中がにゅるーってするの。くすぐったいけど我慢ね」
「じゃあやってみて。二重になってるとこ抜けば見た目あんまり変わらないよ」
「分かりました。朱莉。抜きますよ」
「うん……」
母は少し怯えながらも、薄珂様が示してくれた場所の羽をぐっと握りしめた。
そしてすうっと息を吸い込むと、母はえいっと掛け声を上げて羽を引いた。
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