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「ひゃあ!」
立珂様が言うようににゅるりとした気味の悪い感覚が体内に広がった。何かが勢いよく体内を通り抜けたような感覚だったが、足元を見てそんなことは吹き飛んだ。
羽根だ。薄汚れた私の羽根が足元に広がっている。大量に抜けたそれは間違いなく私の羽根だった。
「ぬ、抜けた!」
「軽くなった! もう、今、今もう軽いわ!」
「でしょー! 感動でしょー!」
「これはどれほど抜いて良いんですか!?」
「好きなだけ。とりあえず歩ける程度にして様子見るといいよ」
「分かりました! 朱莉!」
「うん!」
母はどんどん羽根を抜いてくれた。その度ににゅるりと気味の悪い感覚がしていたが、それすらも歓迎できた。
そのたびにせが軽くなっていく。羽根がばさばさと落ちどんどん積み重なっていく。
そしてこの数分で私の羽根の半分以上が床に落ち、私は壁に寄りかかりながらそっと足を起こした。そしてぐっと力を入れると、今までどれだけ頑張ってもできなかった直立があっさりと叶った。
「立てる! 歩けるわ!」
「朱莉!」
私は母に抱き着いた。自分から駆け寄ったなんていつ以来だろうか。
母は声を上げて泣いて喜び、つられて私もぼろぼろ涙がでてきた。何故か薄珂様も涙目になっていたけれど、立珂様だけはふんふんと鼻息を荒くしていた。
立珂様は一歩ずいっと前に出て来て、ぱっと両手を開いた。
「まだだよ! 次はお着替えの時間!」
「お着替え?」
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