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 次の日、五時半に起きると、顔を洗って化粧をする。眉は書き足すだけでなく眉マスカラもしっかりしてアイシャドウはピンクだ。テレビでは今日の最高気温が二十五度と言っている。トレンチコートを着ていくと暑いかもしれない。ブラウスに薄手のカーディガンだけにしよう。  七時三十分に家を出た。いつもの大通りまでの細い道を歩く。右のタンポポの群生は何本かが綿毛になっている。江里菜はヒール高三センチのパンプスの音を響かせて歩いた。目の前で大通りから男性が道に入って来た。明らかに昨日の朝と夕方に会った男性だ。  今日も男性は疲弊したような顔をして俯き加減に歩いて来る。服装は紺のTシャツにジーンズだ。夜勤明けといった感じだが、こんなによく会うことってあるのだろうか。やはり怖い。  男性とすれ違いざま、男性が言葉を発した。 「綺麗だね」 「え?」 「これから仕事だろう。頑張って。いってらっしゃい」  江里菜は鳥肌が立つのを感じた。一応お辞儀をして小走りで大通りに向かう。横断歩道は青だ。急いで渡ると人通りが多くなったので安心した。  電車の中でストーカーについて調べる。勘違いかもしれないが警察に相談しておいた方がいいだろう。一人暮らしだし、あの道から江里菜のアパートは丸見えだ。部屋の場所も知られている可能性が高い。
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