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 自転車の前かごに食材を入れ、ペダルを漕ぐ。例の道へ入ると、右手の住宅の陰から人が飛び出してきた。江里菜は慌てて避ける。ブレーキをかけて急停止した。見るとあの男性だ。 「おっと。危なかったな」  男性が言うが江里菜は怖くて何も言えない。 「夕飯の買い出しか。今日は何だい?」  江里菜はペダルに足を掛け自転車を漕いで前に進んだ。アパートで止まると追いつかれるかもしれないのでアパートを過ぎ、左に曲がって線路際の通りに出た。交番はどこだっけ。駅の近くには無かった気がする。会社のあるO駅の前に交番があったから明日帰りに相談しようか。それじゃあ今日はどうしよう。あの道に男性がいる気がしてならない。  恐る恐る元来た道を戻る。男性の姿はない。子供を連れた女の人が散歩をしているだけだ。今ならチャンスだ。急いで自転車を停めてアパートの階段を上る。ドアを開けて部屋の中に入ると急いで鍵を掛けた。  夕飯は買っては来たものの、おかずを作る気がしなかったのでご飯を炊いておにぎりを作った。食欲もなかったが無理やり詰め込んだ。
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