8/15
前へ
/15ページ
次へ
 それにしても野口の夫はO街道駅で降りて何をしているのだろう。駅の傍にはドラッグストアとか農協の直売所などがあるが早い時間は閉まっているし、レストランや喫茶店もあるがチェーン店だ。わざわざO街道駅に来る必要もない気がする。  色々と考えながらお手洗いを出るとオフィスフロアに戻って仕事をした。仕事は順調に進んだ。  五時になってパソコンをシャットダウンした。トレンチコートを着て黒のビジネスバッグを持つ。みんなに挨拶しながら会社を出た。駅まで三分。江里菜は速足で歩いた。  電車に乗ってSNSをチェックする。吉田花香に連絡を取ろうとしていたのを思い出した。メッセージを送れるアプリで『久しぶり』と連絡を入れる。すぐに『おお!江里菜、久しぶり』と返ってきた。 『今、花香の住んでいるK市の隣のK平市で働いているの』 『そうなの? じゃ今度、会おうよ』 『私がK市に行くよ。買い物もしたいし』   K市は大きい。K駅の駅ビルには百円ショップや洋服のショップが入っている。飲食店もたくさんある。近辺にはショッピングモールもある。 『今度の日曜日はどう? 夫が交代制勤務だから私は暇なの』  花香のところも交代制か。案外多いことに江里菜は気づく。 『いいよ。二時にお茶するってのはどう?』 『オーケー。改札前にある売店の前で待ち合わせしよう』  電車が乗り換えの駅についた。スマホを見ながら電車を降りる。ホームに立ってメッセージのやり取りを読み返す。江里菜はふと疑問が浮かんだ。 『お子さんも来るんでしょ』 『うん。実家が近かったら親に預けられるんだけどね』 『お子さんに会えるの楽しみだよ。私、子供好き』  日曜日に花香と会うことになった。ちょうど電車が来た。江里菜は電車に乗ってドアのところに立った。一駅だから座らなくても構わない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加