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 降りる駅に着いた。改札を抜けると焼き鳥の匂いが漂っている。江里菜は大通りの信号を渡ってアパートに続く道に入る。右側の住宅街にあるゴミ置き場のゴミが収集されずに残っている。ゴミ捨てのマナーを守らなかったんだろう。  気が付くと真後ろから足音が聞こえた。この先はアパートが何棟かあるのでそこの住人か。江里菜は振り返る。今朝見た男性が俯きながら歩いて来る。ポロシャツは着替えたのか色が違うが間違いない。江里菜はちょっと怖くなった。だが偶然という可能性も大きい。  江里菜は歩くスピードを落とした。男性は相変わらず真後ろをついてくる。まさかまだ明るいのに襲われることはないと思うが江里菜は防犯ブザーを持ってないことを後悔した。  アパートに着いた。江里菜の部屋は二階の奥だ。階段を上がる。男性はついて来なかった。江里菜はほっと胸を撫でおろして部屋に入った。  いつも夕飯は一度帰ってから自転車でスーパーにおかずを買いに行くのだが今日はそんな気になれなかった。あの男性がまだ道にいるような強迫観念に囚われて仕方なかった。江里菜は冷蔵庫の中を見た。キュウリと豆腐があった。ご飯を炊いてこれをおかずに夕飯を済まそうか。そう思ったときに気づいた。昼のおにぎりとサラダがあることに。江里菜は夕飯をそれで済ませた。
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