7日目

1/1
前へ
/7ページ
次へ

7日目

僕は、光莉ちゃんの横で寝た。 もう永遠に起きることは出来ないんだろうけど、なぜか胸あたりは暖かかった。 光莉ちゃんはもう死んでいるけど、ずっと微笑んでいる。 死んでいるけど...幸せになれたんだろう。 僕は、悔いなく死ねる。 光莉ちゃんは僕に死ぬなと言ったのに、この世を去った。 光莉ちゃんは僕のそばで最後を迎えることが出来たことを、心から幸せに思っているみたいだった。 でも、まだ僕は死んでほしくなかったな...。 僕は光莉ちゃんが好きだった。 毎日抱きしめられ、辛いね、苦しいねと励ましてくれた。 迷惑だと思うと同時に、僕は嬉しかった。 光莉ちゃんと一緒にいると、どんな辛いことでも一瞬忘れられる事ができた。 光莉ちゃんはずっと、文字通り僕の「光」になってくれた。 だから僕も、照らしてあげたい。 この世界じゃできないせど、あの世で... 僕の名前は『光陽(ひかり)』。 光莉の兄だ。 これは、妹が死ぬ日までの日記だ。 いつか誰かがこの日記を読んだ時、光莉という人間を知ってもらいたかった。 僕は、光を支える影ではなく、光を照らす光になりたい。 ひとりだけ死ぬなんて、ずるい。 ひとりだけ幸せになるなんて、ずるい。 ひとりだけ現実から消えることが出来て...ずるい。 でも僕は、誰よりもずるい。 こんな良い妹がいて... 毎日笑ってくれる人がいて... 毎日応援してくれる人がいて... ああ、僕はなんて幸せ者なんだろう。 もっと早くそれに気づいていれば、僕もこうならずに済んだのかな... 全部一緒だね、光莉。 僕も今、そっちに行って... そっちで頑張って生きる。 光莉の隣で死ねて、僕は本当に幸せだなぁ... 今日は、僕たちが死んだ日。 ふたつの光が、途絶えた日。 ふたつの光が、輝き始めた日。 ふたつの光が、眩しいほどに周りを照らした日。 誰にも気づかれることの無い光が、報われた日。 今日は、ふたつの光が幸せになった日。 いつか、僕たちが死んだ日。 それは、どの日よりも幸せだった、夢のような日。 1番好きだった人と同じところに行けた日。 ああ、僕は光莉の元に行けて......... 《日記はここで途絶えている。》
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加