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心愛がカラオケ店から出ると、外はもう暗かった。
冷たい風に、羽織ったダッフルコートの前を合わせる。
高校の同級生、5人で3時間コース。
週の真ん中の、ストレス解消だ。
持ち込み禁止の店だったが、それぞれバッグに飲み物やスナック菓子を隠して持ち込み、店員の目を盗んで食べていた。
別に、部屋代は支払っているんだし、みんなやっていることだし。何なら、ちゃんと節約を考えていて賢いと褒められてもいいと思う。
「あー、歌い過ぎて喉ガラガラー!」
「明日のテスト、ダルくない?」
「名前だけ書いて、あと寝てればいいじゃん」
「ねー、誰かバッテリー持ってない? 残り5パーなんすけど」
「彼ピの部屋で充電さしてもらいなよ」
「飲み会でいないから、今日は行かないし」
心愛は唇を尖らせ、ピンクのカバーに包まれたスマートフォンを、肩に掛けたバッグに入れた。バッグの中は、メイク用品とヘアアイロンとヘアブラシと……ミルクティーが半分入ったペットボトル。
顔を顰めて、ペットボトルを取り出す。濁った液体が、ちゃぽんと揺れた。
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