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恐い道
俺は、アパートの前の道が妙に怖かった。毎日通るアパートに面した道。ただのアスファルトであり、生活道路である道なのだが、そこに立つと、いつも背筋がぞくっとして鳥肌が立つかのようだった。
「彰洋~、また立ち止まって怖い顔してる。この道、そんなに気になるの?」
部屋に遊びに来た彼女の咲が俺の顔を心配そうに覗き込む。
「あ、あぁ。ごめん。何だか、妙にこの道が気持ち悪くてな」
「何にも無いただの道路じゃない。変な彰洋ね」
気を取り直して、近所のカフェに向かう。
「モーニングセットふたつ。ドリンクはソイラテアイスとブレンドで」
この店でモーニングを食べるのは、俺と咲が一緒に過ごした日のささやかな楽しみだ。しかし、この日は少し雰囲気が違っていた。強面の二人組の男が、コーヒーを飲みながら密談しているのだ。
「な、なんか怖いね……」
「目を合わせなければ大丈夫だ、安心しろ、咲」
しかし、そんな俺の言葉も虚しく、混みあっている店内で空いている席はその二人組の横だけだった。
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