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その年の秋ごろには、好きな芸能人の自死が相次ぎ、こころを痛めた……更には、それを、共有し合える友がいなかったことも紫奈子の寂しみを強くした。大学一年のときの友達とは、前に、なんとなく、何回か飲んだ程度で。ちゃんとした友達らしき人間がいない――ことも、紫奈子の孤独を深めた。
毎日、オンラインで授業を受講して。課題をこなし。ノートにメモを取る。誰の肉声も聞かない日々が続き、気持ちはふさぎ込むばかり。この肌の状態では、誰とも会いたくない。もしかしたらあたしは、引きこもりなのかも? と自問する。いやいや学校の課題はこなしているからそうじゃないでしょう。
紫奈子にとって大学時代はほぼ、黒歴史だった。いざ就活となったときには、必死にファンデやコンシーラーで肌を隠し、出来るだけひととの対面を避けた。証明写真を撮るときもマスクを外すのがすごく嫌だった。証明写真なんか、マスクありで撮ればいいのに。紫奈子は、必死でコンシーラーで隠しまくって無理に微笑む自身の、3cm×4cmという世界に閉じ込められた自分の顔を見て思った。
そして。
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