☆01. マスクを外さぬ小南紫奈子の事情。☆

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 真夏にマスクをしていると息が苦しくなることもあった。それでも、マスクは、絶対に外せない、紫奈子の大切な砦であった。  ――小南さん、どうしてマスク、外さないの?  とチャットを打ってきた男のことを生涯忘れない。  オンラインで顔出しで話し合うとみんなリラックス出来るらしく――とはいえ、オンライン特有の難しさはあったけれど。顔出しをしないひとがいると、いったいどういうリズムで会話を進めればいいのかよく分からなくなったし、音声が途切れる、誰かが落ちる、のもあるあるだった。発言するにしてもタイミングを見計らわないと誰かと被ったり。率直に、司会者的なメンバーがいないオンラインはかなりやりにくさを感じた。  VOOMで会話をしたけれど、無料なのが四十分なので新しく部屋を作り直したりしてまた入ったりして……億劫で……。  紫奈子には当時彼氏がいたがなんだか面倒くさくなって返事をしなくなったら自然消滅した。
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