普通の人間じゃ、ない

1/1
前へ
/14ページ
次へ

普通の人間じゃ、ない

「あんたねー、だらしないわよ!」  エリリカは、急に腹が立ってきた。  ピンチの時に、困った時に、その人間の真価が問われると、常日頃から師匠である祖父に教わっているのだ。  そして急に、斬の胸倉を掴み上げて、グイグイと締め上げた。 「く、苦しい……。何すんだよ」  エリリカよりも体の小さい斬は、まるで子猫を持ち上げるかのように軽々と持ち上げられた。  エリリカは、その男子の悶絶する苦悶の表情を見て、ふと我に返った。 「ご、ごめん。つい……」  パッと手を離すと、翔吾は、ストンと地面に落ちた。  彼は眉間に深い深い皺を寄せて、ハァ、と溜息をついた。 「お前さぁ、んだから、もうちょっと気を付けてくれよ……」  エリリカは、幼少の頃からの武道修業によって、常人を遥かに超える「チカラ」を身に付けていた。 「ご、ごめん……。つい」  興奮してしまうと、自分を見失ってしまうクセがあった。 「……気を付けよう、な」  翔吾がそう言った、次の瞬間。 ーきゃあああああああああああああー! ーお、落ちて来るぞ!  頭上から、何か猛烈に炎を帯びた「物体」が落ちて来る気配がした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加