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崩壊
燃え上がったメッシュシートから剥がれ落ちたカケラが、火の粉となって降り注ぎ始めていた。
そして、ビル全体を覆っていた「目隠し」が、ドロドロに溶けて、崩れ落ち始めていた。それはまるで、決して活動を止めないピナツボ火山から噴出するあふれ出る溶岩流の様に、生命力を持って、ゆっくり、ゆっくりと、そのビルから分離し始めていた。真っ暗な空と空間の中に、巨人のような赤黒い塊が、まるで真夏の砂漠に裸で横たわっているかのような熱さで倒れ込んできていた。
「まずい、エリリカ、逃げろ! マジで死ぬ!」
もし、あと1秒逃げるのが遅れていたら、エリリカも翔吾も、地獄の炎に焼かれていたことだろう。
「う、うん!」
その時。翔吾は、野生の「カン」を全力で働かせていた。
頭上から落ちてく眼の前の人間の山に向かって走り出した。
「とりあえず、駅の中に逃げ込もう」
だが、二人を阻んだのは、意外なモノだった。
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