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大混乱
新宿駅は、たちまちパニックに陥った。
道路は事故で大渋滞。我先にと逃げ惑う人々の渦が、狭くわずかな改札口に殺到した。
「熱い、熱い!」
「助けて、助けて!」
その姿からは、いつも他人の顔色をうかがいながら行動する反面、他人のことには無関心な人間性を感じさせた。
その自制心を失った人々の理性を取り戻そうと、駅員や警察官は必死だった。
「慌てないで、慌てると危ないです!」
「押さないで、押さないで!」
しかし、その訴えの声は、到底コントロール不能に陥った狂乱の人々を抑制することは届かなかった。
ーきゃあああああ!
甲高い悲鳴とともに、次々と人々が折り重なって倒れ始めた。
「ちょっと……。これ、どうなってんのよ……。みんな落ち着いてよ」
エリリカは呆然とその阿鼻叫喚の地獄絵図を見詰めていた。
背後の巨大なビルが、その紅蓮の炎の勢いをとどめることなく燃え続けている。既に、春先だというのに30度を超える暑さになっていた。
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