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扉を開けると部屋の中はなんとも珍しく、裸電球が何個もぶら下がっていて、少し薄暗かった。
「いらっしゃい」奥から老婆が出てきた。
白髪はボサボサで腰を前屈みにして、声は高くてか細かった。
まさに老婆という表現がピッタリだ。
「あのう、娘にプレゼントと思いまして」と安彦は周りを見回しながら言った。
「いくつ?」と訊かれたので安彦は「六歳になります」と応えた。
すると老婆は「これなんかどう?可愛いわよ」とクマのぬいぐるみを差し出した。
「へえ、可愛いですね」
安彦は時間も無いし、これを包んで貰うことにした。
お金を支払い、出て行こうとすると「これ、よかったらお持ち下さいな」と老婆が小箱を差し出した。
「何です?これは」と安彦は訊ねた。
「これはルーレットなの。数字が指し示すと、心の感情を満たしてくれるとインディアナ地方の種族が昔、使われていた年代物よ」と老婆はにっこり笑っている。
「でも、うちは娘ですし…」と遠慮しようとすると
「性別は関係ない!」と老婆は急に声を荒げた。
安彦が驚いた顔をすると老婆は「もうすぐ生まれるんでしょ?もし男の子だったら丁度いいかもねえ」と今度は優しい口調で、小箱を袋に詰めて押し付けて来た。
安彦はただ唖然として、袋を受け取り早々と店を出て行った。
安彦は何とも言えない不安に駆られた。
あの婆さんは何処かおかしい、、。
しかし、どうして知っているんだ?
もうすぐ二人目が生まれる事を、、。
安彦は何気に腕時計を見て「あっ!やばい」と慌てて走り出したのであった。
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