1.素敵な人

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ホテルをチェックアウトし、一旦家に送ってもらうことにした。 「美月、家どこだ?」 最寄駅と住所を伝えると、空川さんは近いな・・とつぶやきながら、カーナビを操作している。 「どこと近いの?」 「俺の家」 「えっ、どこ?」 「うちは、ここ」 指差した場所を見ると、駅前にできた新しいマンションだった。 「ええっ、買ったの?」 「うん」 「間取りは?」 「2LDKだけど、どうして?」 「・・・・私も、そこ検討してたから」 「は?」 「だって、もう一生ひとりかもしれないなって・・。 だったらマンション買おうかと思ったんだけど、迷ってるうちに完売したのよ」 「・・・・見に来るか?」 「行く!」 「アハハ。じゃ、先に美月の家に向かう」 クルマを走らせながら、『ひとつ聞いてもいいか?』と空川さんが私に尋ねる。 「美月が今まで、誰のものにもならなかったのはどうして?」 「・・・・それ、聞いちゃう?」 「話すの嫌か?」 「・・・・だって、つまらない話だよ」 「そうだとしても、いまの俺にとっては大事なことだから聞きたいんだ」 興味本位で聞いているわけではなさそうだけれど、空川さんにとっては、呆れるような話だ。 「やっぱり・・話したくない」 私は、窓の外に視線を向けた。
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