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「はぁーーー、良かった。美月に『ごめんなさい』って言われた時は、心臓が止まったよ」
「え?」
「断られたのかと思ったってことだよ〜」
「あぁ、そうか、ごめん、違うの、ほんとに、そうじゃなくて、私 ーーー」
私の弁解は、彼の唇で塞がれた。
「少し黙ってなさい。分かってるから・・。
俺が指輪を用意して『夫にしてくれる?』って言ったから、美月も何か用意しないと『奥さんにして』って言えないと思ったんだろ?」
「うん・・そう」
「全く〜。・・・・罪なヤツ」
彼はソファから立ち上がって、冷蔵庫の中をのぞいた。
「あ、あった。美月、お祝いするか」
「お祝い?」
「うん。兄貴が高いシャンパンを冷蔵庫に入れておくって言ってたんだ」
「え、でも飲んでいいの?」
「もちろん。元は、俺の復帰祝いで用意してくれたものだからね」
「じゃあ、遠慮なく・・」
「グラス、出してくれる?」
私がキッチンのカウンターにグラスをふたつ並べると、彼がシャンパンを注いでくれた。
「はい、美月」
「ありがとう」
「これからもよろしく」
「こちらこそ」
軽く、グラスを合わせる。
「美月」
「ん?」
「俺、人生で初めて言う」
「え? 何を?」
「愛してるよ」
私たちのキスは、お互いにシャンパンの香りがした。
その夜のうちに、私は両親に彼のことを電話で伝えた。
電話口で両親と話す彼は、海外赴任のことと結婚の意思を伝え、あっさりと入籍の同意をもらった。
父も母も、急に決まった40歳での娘の結婚に涙を流し、早く彼に会いたいととても喜んだ。
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