452人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
そうだ、と彼がジャケットの内ポケットに手を掛ける。
「井川課長と相澤さんは、来週の日曜日、何かご予定ありますか?」
「いえ、今のところは何も」
「私も空いてますけど」
「そうですか、じゃあ、これを・・」
そう言って封筒を取り出し、それぞれに渡した。
おもむろに開けたふたりから、声が上がる。
「ええっ!」
「きゃーーー!」
クスクス笑う彼と、赤くなる私。
彼が渡したのは、私たちの結婚式の招待状だった。
彼が予約していた教会で、赴任前に式だけあげることにしたのだ。
「でも、永田課長は香港に赴任でしょう? 本部長とは新婚早々、離れて暮らすんですか?」
「ううん、本当に偶然なんだけど、実は彼もJHで香港支社を任されることになって・・」
「えええーーー、そんな偶然あるんですか? 本部長、裏工作したんでしょ」
「してないしてない。なんなら、ずっとシドニーだと勘違いしてたくらいだから」
「そうなんだ・・結局、結ばれる運命にあったってことなんですね〜」
いいなぁ、とマジマジと招待状を見る相澤さんが、思い出したように言った。
「本部長、課長って本部長に甘えますか?」
「ちょ、ちょっと相澤さん、いきなり何言うのよ!」
火照りが冷めた私の頬が、また一気に赤くなる。
「相澤さんの言う『甘える』の定義って何だろう?」
『相手の好意に遠慮なく寄りかかる』ですよ、と相澤さんが説明する。
「なるほど。だったらそうかな・・・・でも、寄りかかってるのは、むしろ俺かも」
「いや〜、もう聞いてる私が照れちゃいます!」
「相澤、飲みに行こうぜ・・こんなにノロけられたら、やってられない」
アハハハ、と4人で笑い合った。
最初のコメントを投稿しよう!