3.真実

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そうだ、と彼がジャケットの内ポケットに手を掛ける。 「井川課長と相澤さんは、来週の日曜日、何かご予定ありますか?」 「いえ、今のところは何も」 「私も空いてますけど」 「そうですか、じゃあ、これを・・」 そう言って封筒を取り出し、それぞれに渡した。 おもむろに開けたふたりから、声が上がる。 「ええっ!」 「きゃーーー!」 クスクス笑う彼と、赤くなる私。 彼が渡したのは、私たちの結婚式の招待状だった。 彼が予約していた教会で、赴任前に式だけあげることにしたのだ。 「でも、永田課長は香港に赴任でしょう? 本部長とは新婚早々、離れて暮らすんですか?」 「ううん、本当に偶然なんだけど、実は彼もJHで香港支社を任されることになって・・」 「えええーーー、そんな偶然あるんですか? 本部長、裏工作したんでしょ」 「してないしてない。なんなら、ずっとシドニーだと勘違いしてたくらいだから」 「そうなんだ・・結局、結ばれる運命にあったってことなんですね〜」 いいなぁ、とマジマジと招待状を見る相澤さんが、思い出したように言った。 「本部長、課長って本部長に甘えますか?」 「ちょ、ちょっと相澤さん、いきなり何言うのよ!」 火照りが冷めた私の頬が、また一気に赤くなる。 「相澤さんの言う『甘える』の定義って何だろう?」 『相手の好意に遠慮なく寄りかかる』ですよ、と相澤さんが説明する。 「なるほど。だったらそうかな・・・・でも、寄りかかってるのは、むしろ俺かも」 「いや〜、もう聞いてる私が照れちゃいます!」 「相澤、飲みに行こうぜ・・こんなにノロけられたら、やってられない」 アハハハ、と4人で笑い合った。
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