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そこからのモリーは目を見張るほどの回復を見せた。
よく食べ、よく眠り、適度に体を動かしながらお腹の中にいるテットにいつも話しかけていた。
「ねぇテット。あなたに会えるのが楽しみで仕方ないわ」
そうしてモリーは夜になるといつも窓辺に腰掛け、優しくお腹をさすりながら『星に願いを』を歌って聞かせていた。
予定日より少しだけ早くモリーは産気づいた。
「大丈夫かい?」
オロオロと動揺するだけの僕に、モリーは微笑んだ。
「ええ。だってようやく私達のテットと会えるんですもの」
モリーは一切不安を感じていない様子だった。間隔の狭まって行く陣痛の痛みに耐えながらも、期待に満ちた表情で分娩室へと入って行った。
どこか儚げで少女のようだったモリーは、すっかり母親の顔になっていた。
僕は窓からきらめく星空にひたすらモリーとテットの無事を祈った。
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