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テーブルに敷かれたランチョンマットに頭だけ突っ込んでブルブルと震えているのは親指サイズの『コビト』だった。
コビトはカーペットの切れ端のようなゴワゴワの服を身に纏い、ハムスターのように丸まっている。
「見られた? 見られた!? ヒトに見られたら、僕、消えちゃう……」
それこそ消え入りそうな震える声が聞こえた。まだ幼い子供の声だ。
僕は反射的に背を向けると、コビトに聞こえるようわざと大きな声で言った。
「なぁんだ。虫がいたかと思ったが見間違いだったか。それともネズミかな? あいつらはすばしっこいからなぁ」
そのままリビングを出て扉を閉めた僕は、すぐさまキッチンに回り込みカウンター越しにこっそりとリビングをのぞきこむ。
テーブルの上にコビトの姿はなく、ゴワゴワの毛玉のようなものがダッシュボードの隙間にするりと入り込んでいくのがチラリと見えた。
「消えずに済んだみたいだな」
僕はホッと胸を撫で下ろして、足取りも軽く車へと戻った。
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