温もり

1/1
前へ
/4ページ
次へ

温もり

 気がついた時、僕は病院のベッドにいた。 「え……。  僕、どうして?」 「どうして? じゃないわよ!  あなた、凍死しかけたのよ!  ばか!」  美佐子が僕の上に泣き崩れて、胸をバンバン叩いた。 「お、おとーさ……ごめ……なさい……。」  みゆが泣きはらした顔でしゃくり上げながら、握りしめた手で両目を何度もこすっている。伸ばしかけの髪が、涙で濡れて頬にくっついていた。美佐子が伸ばさせているのだ。来年の入学式でおさげ髪にさせたいと言って……。 「……だいじょうぶだよ。」  僕が二人の頭を撫でた時、医師が来て言った。 「気がつかれましたか。  さいわい、異常はないようです。  すぐにでもご帰宅になれますよ。」 「はい。」  僕はうなずいて、あらためて妻と娘を見た。  また会えて、良かった。  本当に……良かった。 「二人とも、泣きやめよ。」  言った僕が、泣き出してしまった。  僕は二人を左右それぞれの腕で抱き締めた。  とても温かくて、しみてきて、さらに泣いてしまった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加