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やんちゃっ子
「あらあ、冷蔵庫、何もないわね。
私、ちょっとそこまで行ってくるわ。」
休日の昼に、メシの支度にかかろうとした妻が、エプロンを脱いで買い物に出た。
幼い娘と二人で留守番することになった僕は、冷蔵庫を覗いてみた。
「うわあー、本当だ。おかずの素になる物が1つもないよ。」
「ないよー。」
娘は復唱して笑った。
そして僕が冷蔵庫を離れると、なにやらごそごそやりだした。
「なにしてるかな?」
見に戻ると、娘は冷蔵庫内の棚を外していた。
「ん? なにがしたいの?」
「おとうさん、はいれる?」
「え?」
僕はかなり小柄なほうで、まだ若いせいもあり、着る服によっては中学生に間違われることもあった。
「まあ、入れないことはないけど。」
「はいって!」
娘はぐいぐい押してきた。
「ははは、わかったよ。
お母さんには内緒だぞ?」
「うん、ないしょ!」
僕は身を丸めて庫内に入り、座って外の娘に微笑んだ。
「入っちゃった!」
すると娘はきゃっきゃっと笑い……
扉を閉じた。
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