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充のマンションに、祐理もやって来た。本当は今日は用事があって会えないはずだったのだが、ご先祖様のおかげでそれどころではなくなったらしい。
そのために2人だけの時間がとれたのは、むしろ喜ばしいかもしれない。
充のベッドに2人腰掛けた。
「今日はどうしようか?」
充が祐理を見る。
「ぽっかりと空いた一日だから、2人でのんびりすごそう」
そう言って祐理が笑う。その笑顔が可愛すぎて、充の胸は弾んだ。
「そうだね。じゃあ……」
祐理の肩に手をかけ、顔をのぞき込むようにする充。
「あっ……」といった彼女が、しかしすぐに目を閉じた。
充はゆっくりと顔を近づけていき、彼女の唇に自分のそれを重ね合わせ……。
「おおっ! いた、いた! 良かった、また会えもうした!!」
突然声が室内に響いた。
うわぁっ!
きゃっ!
2人が慌てて体を離す。
見ると、ご先祖様が2人して再登場した。
「な、何ですか?」
充が怒鳴るように訊く。
「先刻おぬしがかけてきた、面妖な酒があるでござろう? しゅわしゅわするヤツ。あれが気になり申してな。氏神様に申したらぜひ飲みてさながらといふ。幾つかわけてくれ。それから、この時代には美味な食べ物も多いといふでないか。たまにもらいに来るにて、宜しくな」
「はあぁぁぁ……」
充は溜息をつきながら、今度はちゃんとした清めの塩や酒を用意しよう、と心に決めた。
Fin
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