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「充くんっ!」
声が聞こえる。祐理が公園の入り口辺りで手を振っていた。
充が駆け込んでいくと、彼女は泣きそうな表情で抱きついてきた。
「祐理ちゃん、何かあったの?」
「うん、それがね、それがね……」
必死に何かを言おうとする祐理。だが顔を上げた途端、充の肩越しに何かを見ながら息を呑んだ。
「あっ! ああぁぁ! 出たぁ!」
出た? しまった、あいつ、やっぱりついて来たのか!
振り向く充。しかし、そこにいたのは……。
「あれ?」
充は目を見張った。和装の女性が宙に浮いている。それも、身体が透けていて向こう側が見える。つまり、幽霊……。
「み、充君にも見えるの?」
「あれはいったい……」
「私のね、先祖なんだって」
なんと、祐理の方にも先祖が現れていたのか……。
その女性の幽霊は、きつい視線を充に向けた。
「なんじゃ、その男は。己の渡世も乱れておるといふに、なにを致し候?」
「ああやって私にあれこれ命令するのよ、掃除しろとか、身なりをもっとよくしろとか……」
嘆くように言う祐理。
うーむ、そっちも毒先祖だったのか……充は溜息をついた。
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