16人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ、見つけたぞっ!」
こちらの先祖の声も聞こえる。
「あ、まずい、こっちも来ちゃった」
「えっ?」
祐理が目を見張った。
「もうゆるさんからなっ!」
怒鳴り声が響く。だが不思議なことに、その声が聞こえているのは充と祐理だけらしい。行き交う人々は気にもしていない。
いや、もう1人――と言っていいのか?――祐理の先祖の幽霊も、充の方の毒先祖に気づいて目をやった。そして、なぜかわなわなと震えはじめる。
「こ、此方の人……。良かった。また会えもうした!!」
そう声をかけられ、充の毒先祖も反応した。
「おお、我が妻よ、ここにいたか。会いたかったぞ」
2人の先祖は、充と祐理などもはや視界にも入らぬかのような感じで、ヒシと抱き合った。どちらも泣き崩れている。
なんだこれ?
充は唖然としながら祐理を見た、彼女も首を傾げている。
のどかな公園で、幽霊夫婦は抱き合いながらしばし泣き続けた。
最初のコメントを投稿しよう!