毒先祖

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 「これ、見つけたぞっ!」  こちらの先祖の声も聞こえる。  「あ、まずい、こっちも来ちゃった」  「えっ?」  祐理が目を見張った。  「もうゆるさんからなっ!」  怒鳴り声が響く。だが不思議なことに、その声が聞こえているのは充と祐理だけらしい。行き交う人々は気にもしていない。  いや、もう1人――と言っていいのか?――祐理の先祖の幽霊も、充の方の毒先祖に気づいて目をやった。そして、なぜかわなわなと震えはじめる。  「こ、此方(こち)の人……。良かった。また会えもうした!!」  そう声をかけられ、充の毒先祖も反応した。  「おお、我が妻よ、ここにいたか。会いたかったぞ」  2人の先祖は、充と祐理などもはや視界にも入らぬかのような感じで、ヒシと抱き合った。どちらも泣き崩れている。  なんだこれ?  充は唖然としながら祐理を見た、彼女も首を傾げている。  のどかな公園で、幽霊夫婦は抱き合いながらしばし泣き続けた。
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