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どのくらい時間が経っただろう?
日差しが降り注ぐ公園のベンチに、充と祐理は座っていた。
そして、それぞれの先祖が目の前に立っている。その姿は、おそらく2人以外には見えていないのだろう。これだけ奇異な格好をしているのに、公園で遊ぶ人々は何も言わないし、視線も向けてこなかった。
「で、つまり、ご先祖様は奥さんを探しにこの時代に来た、っていうことですね?」
充が訊いた。
「うむ、そうじゃ。氏神に訊いたらこの時代を彷徨っていると。探すついでに堕落した子孫を鍛えてこいと申された」
「別に堕落しているわけじゃあ……」
まいったな、と充は頭をかく。
「この身も同じです。戦で死んだ主人と会いおりきくて自害候成りが、いずこにいるかわからずに氏神に尋ねたら、この時代へいけ、と」
迷惑な氏神だなぁ……と胸の中でこぼす充。祐理も同じらしく、目配せして肩を竦めた。
「とにかく、もう目的は果たせたんだから、あの世? 元の時代? 空の上? どこかわかりませんが、戻っていただけるんですよね?」
充が訊く。その隣で祐理が何度も頷く。
「そこで、お2人幸せに暮らしてください」
祐理にそう言われ、ご先祖2人は見つめ合い、頷き合った。
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