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まいったな……。
充は頭を抱えた。
「それ」には目を覚ましてからすぐに気づいた。見えないふりをしていたのだが、いつまでもこのままというわけにもいかない。
一人暮らしのワンルームマンションだ。充は壁際のベッドの上で寝たふりをしながら、もう一度チラリと「それ」を見た。気づかれないように、横目でさりげなく……。
相変わらずリビングの片隅、ベッドの反対側、テレビの横にちょこんと座っている。
ちょんまげ、和装で、鎖帷子というのか、防具を着けていた。戦国時代の武士のような感じだ。いや、実際そうなのかもしれない。
その姿は朧気で、向こう側が透けて見える。実体がないということはすぐにわかった。かといって、ホログラムのように何かが映し出されているわけではない。
つまり、幽霊……。
充はけっこう霊感が強い方だった。子供の頃からたまに霊を見ることがある。
小学生時代は、そんな話をして友達からおもしろがられた。学年があがるうちに「嘘つき」と言われ、いじめを受けたこともある。
なので、中学の途中くらいから霊感の強さについてはあまり口にしないでいた。
見えた時もなるべく気にせずに過ごしている。何かをされたということはないので、見えないことにしておけば特に生活に支障はなかった。
だが、こんなに近くに現れたのは初めてだ。
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