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おくの部屋にいた七海をつれてもどると、さっちゃんがいなくなっていた。かわりに母さんが台所にいる。
「母さん。さっちゃんは?」
「えっ。さっちゃん?」
と、母さんは目をぱちくり。
「うん。七海ぐらいの女の子なんだけど」
右手を上げ下げし、さっちゃんのせたけを教えてあげる。
「ナナちゃんぐらいの? う〜ん? そうね、女の子は――いないみたい」
母さんが首をかしげてほほえんだ。ぼくの湯のみにあまざけをつぎながら、目を合わせてくる。
なんだよ、母さん。へんな顔して見ないでよ。
一体、さっちゃんはどこに行ったんだろう。なにも言わずに帰ったのかな?
「ねぇ。さっちゃんてだぁれ?」
トレーナーのそでを引っぱって、七海が聞いてくる。
さっちゃんはいなくなっていて――七海はさっちゃんを知らなかった。
(おわり)
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