あ〜ん、とひと口

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「南ちゃんには会えた?」  ケンくんたちとおまつりを楽しんでうちに帰ると、台所にいた母さんがそんなことを聞いてきた。 「うん? 会えたというか、会ったけど。なんで?」 「(なお)ちゃんが家を出た後で、南ちゃんうちにきてね。直ちゃんはおまつりに行ったんだよ、って教えたら急いで帰っちゃって。だから、南ちゃんもおいかけておまつりに行ったのかも、と思って」  と、母さん。  うちにきたのか……。ゆかたを着た南ちゃんが思い出される。 「たしかに、南ちゃんには会ったけど。でも、べつにぼくをおいかけてきたわけじゃないってば。友だちときたって言ってたよ」 「あら、そう。ふぅん」  と、母さんはなんとも言えない顔をした。  なんだよ。なんだか気になるじゃないか。  だから、ぼくもなんとも言えない顔をかえしてやった。  ふぅん、って。                (おわり)
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