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「あ、直ちゃん」
宿題前に明日の天気をチェックしようと居間でテレビを見ていたら、母さんに声をかけられた。
「ちょうどよかった。南ちゃんのところに、シイタケを持って行って」
「えぇっ」
めんどくさいよ、めんどいよ。これでも、草むしりでつかれてるのに。
「この間、およばれしたのに、なにも持って行ってないでしょ?」
「えぇっと。この間……」
考えるまでもない。はしまき? ――おこのみやきを食べに行った時のことだ。
「まあね」
それはそうなんだけどさ。たしかに、なにも持って行ってないんだけどさ。
「はい、これ」
と、母さんにシイタケが入った竹かごをわたされた。そういえば、この間、南ちゃんのうちに行ったころから、ぼくのうちでもシイタケをができはじめたんだ。
シイタケ。
売りものにするほどはないんだけれど、うらにわの木の下なんかにコマうちした原木をならべてある。
ニュースのこうもくに、ぼくの住んでいるちいきで原木シイタケがしゅん入りしたというのがあった。なんとなく目がはなせないでいたら、
「ちょっと。聞いてるの? ほら、行って行って」
と、母さんにテレビのリモコンをとり上げられた。
「急かさないでよ。もぅ」
言いながら、土間にひょいと下りるぼく。
――?
当たり前のようにゴムぞうりで出ようとして――運動ぐつにはきかえた。くつ下をぬいでしまっていたので、へんな感じになる。
「……行ってきます」
「はぁい。気をつけてねぇっ」
と、えがおの母さん。それがどうにもおかしくてふき出したようにも見えて、ちょっとだけ気になった。
(おわり)
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