ひさしぶりだね

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 自分の部屋。学習づくえについていたぼくは、いすをずらしてせのびする。  しゅくだいはどうにかすませた。図書室でかりた本を読もうかな、と思ったけれど。外に出てみようかな、とも思う。  カキの木が気になるのだ。  うちにはカキの木が六本ある。にわに一本、うらにわに一本、畑に四本。そのうち、今年まともにみをつけているのは、にわの一本と畑に四本あるうちの一本だけ。きちょうなカキだった。せっかくだから、じゅうぶんにうれさせてからちぎってやろうと、カキ番をかって出ていた。 「あっちのえだとか、どうだったかな。う〜ん。今日か明日か……」  ――よし、と立ち上がる。  やっぱり、外に出ることにした。  にわのカキの木をかくにんして、畑のカキの木の方にむかう。先をわった青竹と、あらいおけを持って。畑のカキの木の方は、もう食べごろになっていたのだ。  だんだん畑のカキの木があるところまで行くと、はなれた小さな畑に父さんがいるのが見えた。そして、父さんのそばにはもう一人いた。緑のふくを着た女の子で、遠目ながら見おぼえがあった。 「あの子って、図書室にいた子だよね」  まちがいないと思う。今日、長づくえでむかいにすわっていた女の子だ。  なんでここにいるんだ? 家がこの近くだとか? いやいや。このあたりの子なら、どこのだれだかぼくが知っているはずだよ。あの女の子は、このあたりの子じゃない。  ぼくをつけてきたとか? ――それは、ちょっと。こわいんだけど。  ざわざわする。  ぼくは、その場でみをよじった。  父さんと女の子がいるところには、うちで食べるぶんのナスがうえてある。ためしにうえてみたものだとか、よそではあまりつくらなくなったものだとかが多い。このごろはもうナスの太りは止まっているけれど、あじのしっかりしたいいナスがのこっている。  女の子は、父さんにならってナスのしゅうかくをてつだっているようだった。 「ふぅん」  ま、いいけど。ぼくをつけてきた、とかじゃないならね。  気にしてもしかたない。ぼくは自分のやるべきことをやるんだ。先をわった青竹で、よくうれたカキがついたえだをからめおった。ちょろちょろっと三十コばかりのカキをちぎる。
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